なぜ今、多要素認証(MFA)が必要なのか
「セキュリティ強化のために、多要素認証を導入せよ」 そんな上司の一言に、戸惑った経験はありませんか?
あるいは―
「多要素認証を導入したら、ログインが面倒になった…」
「今使っているサービスに標準で多要素認証が組み込まれているのに、なぜ専用の製品が必要なの?」
そんなふうに感じた方も多いのではないでしょうか。
最近では、多くのシステムやサービスで多要素認証(MFA)が導入されるようになり、情報システム部門の方々にとどまらず、一般の従業員の方々もその運用・利用に関わる場面が増えています。
しかし、いざ導入・運用・利用する立場になると、「そもそも多要素認証とは何なのか」「本当に必要なのか」「何を選べばいいのか」など、さまざまな疑問が浮かんできます。
そこで、本記事では、多要素認証の基本的な仕組みや導入メリットに加え、「こういう理由で多要素認証が必要なんだ」「自社に合った選び方はこうなんだ」といったヒントになる情報を解説します。
多要素認証(MFA)の基本とメリット
まずは、多要素認証(MFA)の基本的な仕組みについて確認しましょう。
多要素認証(Multi-Factor Authentication, MFA)(以下、多要素認証)とは、異なる種類の認証情報を2つ以上組み合わせて本人確認を行う仕組みです。
たとえ1つの認証情報が漏えいしても、他の要素によって不正アクセスを防ぐことができるため、不正アクセスのリスクを大幅に軽減できることが特徴です。
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多要素認証(MFA)とは ~種類や仕組み、それぞれのメリットを詳しく解説~
多要素認証のメリット
多要素認証には、単なるセキュリティ強化だけでなく、さまざまなメリットがあります。
不正ログインの防止
パスワードを攻撃者に盗まれたとしても、他の認証要素が防壁となり、不正ログインを防止。
サイバー攻撃からの防御
フィッシングや総当たり攻撃など、多様なサイバー攻撃を幅広く防御。
コンプライアンス対応
GDPRやISO27001など、多要素認証を推奨・義務化している各種基準に対応可能。
企業の信頼性向上
セキュリティ意識の高さを社外にアピールすることで、企業の信頼性が向上。
多要素認証の最新トレンド
多要素認証は、今後さらに高度化・多様化していくことが予測されています。
その背景には、サイバー攻撃の巧妙化、リモートワークの定着、個人情報保護の強化といった、社会全体の変化があります。
ここでは、今注目されている4つのトレンドをご紹介します。
技術 | 概要 | 注目される理由 |
---|---|---|
パスワードレス認証 | パスワードを使わず、生体認証やセキュリティキーなどでログインする方式 | パスワードの漏えいや使い回しによる被害が多発している中、「パスワードそのものを使わない」という考え方が広がっている。FIDO2などの技術が普及し、GoogleやMicrosoftなどの主要IT企業でも導入が進んでいる。 |
AIによる適応型認証 | ユーザーの行動・環境をAIが分析し、いつもと異なるアクセス時のみ追加認証を求める方式 | 常に高いセキュリティの認証を求める方法ではユーザーの負担が大きくなりやすい。適応型認証は「リスクが高い時だけ厳しくする」という柔軟な運用が可能で、使いやすさと安全性を両立。特に金融・医療などの高セキュリティが求められる分野を中心に導入が進んでいる。 |
分散型アイデンティティ(DID) | 利用者自身がID情報を分散的に管理し、提供する情報を最小限に制御できる仕組み | 個人情報の預け先が増える中で、「自分の情報は自分で守る」という自己主権型の考え方が注目されている。ブロックチェーンを基盤としたWeb3関連技術の1つとしても期待されている。 |
ゼロトラストセキュリティ | 「誰であっても、常に確認する」ことを前提としたセキュリティの考え方 | テレワークやクラウド利用の拡大により、社内と社外の境界がなくなってきたことで、「何も信用せず、常に認証」するゼロトラストの考えが広く採用され始めている。NISTなどの標準機関も推奨しており、多要素認証はその実現に欠かせない技術となっている。 |
業務システムの標準機能による多要素認証機能の限界と追加ツールのメリット
最近の業務システムやSaaSには、基本的な多要素認証機能があらかじめ組み込まれていることも多く、「専用の製品を使わなくとも、今使っているシステムの標準多要素認証で十分なのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、用途や運用環境によっては、その標準多要素認証だけでは不十分なケースがあるのです。
以下のようなケースでは、追加の多要素認証ツールが必要になる場合があります。
ケース例 | 標準機能の限界 | 多要素認証ツールを追加するメリット |
---|---|---|
他社システムやVPNも含めて統合管理したい | 自社製品との連携に特化しており、他社システムへの連携が限定的なことがある | SAML / OIDC / RADIUSなどの標準プロトコルに幅広く対応し、異種システムも一元管理が可能 |
SSOで利便性を向上させたいが、対象SaaSがIDP機能を持たない | SaaS側にSSOやIDP機能がなく、SSO環境を構築できない | 多要素認証ツールがSSO機能を補完し、IDPとしても機能することでSSOの実現が可能 |
高度なセキュリティ要件へ対応したい | 基本的な認証手段にとどまり、より強固な認証手段の選択肢が限られることがある | FIDO2・端末証明書・生体認証などを組み合わせることで、より高セキュリティな要件に対応可能 |
業界ガイドラインや規制に準拠したい | セキュリティガイドラインで求められるレベルに達していない場合がある | 多要素認証ツールにより、ゼロトラストや多要素認証の実装などガイドライン対応が可能に |
細かいポリシー設定が必要 | 条件付きアクセスが限定的で柔軟性に乏しいことがある | ユーザー属性・端末・場所・時間帯などを条件に、認証手段を柔軟に切り替えることが可能 |
監査やログ管理へ対応したい | ログ情報の粒度や可視が限定的で、監査証跡として不十分なことがある | 認証ログの可視化・検索・出力などが容易で、監査証跡の強化が可能に |
スマートフォンを使わずに多要素認証を実現したい | 多くの標準多要素認証がスマートフォンアプリ(認証コードやプッシュ通知)前提で構成されている | スマートフォンを使わない認証方式が選択可能で、運用負荷を軽減 |
そもそも既存の業務システムに多要素認証機能がない | 自社開発・オンプレミス型の業務システムなどは、多要素認証機能がそもそも存在しないことがある | リバースプロキシやAPI連携により、既存システムにも多要素認証を後付け可能 |
多要素認証の認証方法の種類
ここでは、多要素認証の認証方法の種類と、それぞれの特徴を比較します。
種類 | 代表例 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
ワンタイムパスワード(OTP) | メール送信型、SMS、認証アプリで発行されるコード | 簡単に導入可能 対応サービスが多い | SMSはフィッシングや盗聴に弱い コード入力の手間がある |
認証アプリ | Google Authenticator Microsoft Authenticator PassLogic Authenticator | スマホがあればすぐ利用可能 低コスト | スマホ紛失時の復旧が必要 慣れていないユーザーには煩雑に感じる |
生体認証 | 指紋認証、顔認証、虹彩認証など | 入力の手間がなく直感的 本人確認として強固 | 端末に依存する 一部の人にとっては利用困難なケースあり 高コスト |
セキュリティキー/パスキー | YubiKey、FIDO2対応キー、スマホ内蔵のパスキー | 非常に高いセキュリティ フィッシング耐性が高い | 初期導入コストがやや高め 物理的な紛失リスク |
QRコード認証 | PC画面のQRコードをスマホで読み取る方式 | パスワードレスに近い SMSより安全で使いやすい | QRコードを読み取れる端末が必要 オフライン環境では利用不可の場合も |
FIDO認証 | FIDO2対応のパスキー、生体認証、セキュリティキー | 入力の手間がなく直感的 生体情報は端末内にのみ保存 漏洩リスクが低い | 対応サービス・端末が限定される場合がある 導入時の理解や準備が必要 |
多要素認証導入・運用時のチェックポイント
実際に多要素認証を導入・運用する際には、どのような点に注意すべきでしょうか。
ここでは導入成功のためのポイントをいくつかご紹介します。
導入時のポイント
目的に合った方式を選ぶ
セキュリティ強度、使いやすさ、導入コスト、復旧対応など、目的に合った認証方式を検討する。
段階的に導入する
管理者アカウントなどの重要システムから小規模に始め、段階的に範囲を拡大するとスムーズ。
複数の認証手段を用意する
利用者の環境やニーズに応じて選べるよう、複数の認証方法を提供する。
既存システムとの連携を考慮する
現在利用中の業務システムと連携できるか、標準プロトコル対応を確認する。
拡張性を考慮する
将来的にビジネス環境やインフラが変化した場合でも、認証方法を柔軟に切り替えることが可能かを確認する。
運用上の注意点
ユーザーの負担を減らす
多要素認証に加えてパスワードレス認証やSSO(シングルサインオン)を組み合わせることで、ログインの手間を軽減。
コストを適切に管理する
クラウド型多要素認証の活用や段階的な導入を検討し、無理のない予算で運用する。
システムとの連携性を確保する
SAMLやOIDCなどの標準プロトコルに対応しているかを確認し、既存システムとスムーズに連携させる。
継続的な見直し・改善を実施する
中間者攻撃や多要素認証疲労攻撃などの新たな脅威に備え、定期的なアップデートと運用の見直しを行う。
中間者攻撃(Man-in-the-Middle Attack、略称:MITM攻撃)とは?
中間者攻撃とは、通信を行っている2者の間に第三者(攻撃者)が介在し、通信内容を盗聴・改ざん・なりすましなどを行う攻撃手法です。
この攻撃の特に危険な点は、被害者が気付きにくいことです。通信は一見正常に行われているように見えるため、利用者は不正な介入に気づかず、気付いたときにはすでに個人情報や重要なデータが盗まれているというケースも少なくありません。
多要素認証疲労攻撃(MFA Fatigue攻撃)とは?
攻撃者が何らかの方法でユーザーのIDとパスワードを取得し、繰り返しログインを試みることで、正規ユーザーが誤ってプッシュ認証通知を承認してしまい、不正アクセスを許してしまう――これが多要素認証疲労攻撃です。
代表的な多要素認証ツール
多要素認証の重要性が高まる中、企業向けに提供されている多要素認証ツールには様々なものがあります。今回は、特長的な以下の製品をご紹介します。
製品名 | 特長 | 本社所在地 |
---|---|---|
Okta | クラウド型のIDaaS(Identity as a Service)。認証アプリ・プッシュ通知・OTPを中心とした構成。SSOに強み。 | アメリカ |
CyberArk | 特権ID管理と連携した高セキュリティ認証。生体認証やハードウェアトークンに対応。 | イスラエル |
Microsoft Entra ID | Microsoft 365との統合に優れた多要素認証機能。Windows HelloやAuthenticatorとの連携も可能。 | アメリカ |
PassLogic | 知識・所有物・生体の3要素すべてに対応。マトリックス方式など9種の認証による多彩な多要素認証を提供。 | 日本 |
PassLogicで実現する柔軟な多要素認証
多くの多要素認証ツールの中で、PassLogic(パスロジック)には独自の特長があります。
「自社に合った柔軟な多要素認証を探している」「認証の手間を減らしながら、強固なセキュリティを実現したい」という方にとって、PassLogicは有力な選択肢となります。
PassLogicが選ばれる理由
豊富な認証方法 | マトリックス方式 | 幅広い適応性 |
将来的にビジネス環境やインフラが変化した場合でも、状況に応じて8種類の認証方法を組み合わせ、16種類の多要素認証方法を柔軟に切り替えられるため、多要素認証ソリューションとして長期的な利用が可能です。 | パスワードに代わる知識認証として、マトリックス方式による認証(PassLogic認証)を採用しています。ブラウザだけで完了するワンタイムパスワードの仕組みで、専用端末や固定パスワードが不要なため、高い利便性とセキュリティを実現します。 | Microsoft 365をはじめとするクラウドサービスや、オンプレミスの社内ウェブアプリなど、幅広いシステムとSSO連携が可能です。さらにSASE /SSE/ VPNのほか、Windowsのリモートデスクトップ(RDP)にも対応し、社外からのアクセス時にも多要素認証が利用できます。 |
~ 以下のようなニーズをお持ちの方には、PassLogicが特にフィットします ~
💡ニーズ | PassLogicで実現できること |
---|---|
スマホやトークンなどの物理デバイスに依存せずに、多要素認証を実現したい | デバイスレスで、PCブラウザだけで安全な認証が可能 |
さまざまなクラウドサービスへのログインを一元管理したい | SAML対応により、主要なSaaSとの連携もスムーズ |
ゼロトラストセキュリティを本格的に整備したい | クライアント証明書や多要素認証を柔軟に構成可能 |
オンプレミスのレガシーシステムとクラウドの両方をカバーしたい | クラウド・オンプレ両対応で、段階的な導入にも最適 |
外部委託や監査対応のため、操作ログやアクセス制御を強化したい | 詳細なログ取得・アクセス制御機能でガバナンス強化を支援 |
いざという時のサポートが手厚い製品を利用したい | 国内開発・国内サポート体制で、導入から運用まで安心対応 |
さまざまな企業の多様なニーズに対応できるのが、PassLogicです。
多要素認証は今や「導入して当たり前」の時代に
サイバー攻撃の高度化が進む中、多要素認証は企業にとって欠かせないセキュリティ対策となっています。大切なのは、「導入して終わり」ではなく、自社に合った方式を選び、継続的に運用・改善していくことです。PassLogicは、その取り組みを支える確かな選択肢として、多くの企業・団体に導入されています。大切な情報資産を守る第一歩を、PassLogicとともに歩み出してみませんか?

この記事を書いた人:
パスロジ株式会社 マーケティングチーム
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